約 1,225,101 件
https://w.atwiki.jp/okaishonen/pages/11.html
更衣室のベンチに柔らかい布で縛り付けられた岡井少年が震えていたのは 背中に染みた水の冷たさだけではあるまい。 すでにシャツのボタンは下から 上まで外され、Tシャツもヘソあたりまで捲り上げられた岡井少年は足の間に しゃがみ込んで今まさにズボンを脱がさんとする梨沙子を見た。 梨沙子は脇に置いたノートに目をやりながらズボンのチャックと格闘している。 「何これ、外れにくいよ?」 「もう許してー、りーちゃん」 岡井少年は女の子の様な声を出すが梨沙子は聞く耳を持たない。 「”千聖ノート”通りにやってるだけだから、じっとしてて」 数日前に梨沙子が拾った岡井少年のノートには自身を主人公にした中二レベルの エロい妄想が書いてあったのだ。 梨沙子はそのノートの暴露をエサに岡井少年を 更衣室に呼び出し、ノート通りに少年をいたづらしていた。 ノート通りにいけば次は…。 「あ痛っ!…元気過ぎだよ、千聖の。でも、ちっさーだけにちっさいかと思ってたけど、 結構おっきいね。グヒョヒョ」 「言わないで…」 ボクサーブリーフから飛び出した勢いで頬を弾かれた少年のJBOYの付け根を 人差し指と親指でつまんで先っちょをペロペロし始めた梨沙子は上目で快楽に 悶える岡井少年の姿を楽しんだ。 少年は少年でただただ妄想を書き連ねていたけどそれがまさか梨沙子に 実現されるとは思ってもおらずただ現実に起こっている快楽に身を委ねていた。 「ピチュピチュ…うーんおいし。…えーと次は?何するんだっけ」 「つ、次のはダメッ」 阻止しようとした岡井少年だったが両手両足の自由が付かない状況ではそれを 止めることをできず、梨沙子の口内の熱さを右のゴールデンボールで感じる事となった。 「はむはむ…じゅるじゅる…」 ひとくみのクラッカーを梨沙子が交互に舐め、ハムるのを感じながら岡井少年は 沸き起こる快楽に身を委ね、何度もその愛の種を同い年の制服美少女にぶっかけた。 といった妄想を書き記したノートをどこかに無くした岡井少年はある日愛理に呼び出された。 手にはあのノートが握られていて、愛理の笑顔は天使のようであり悪魔のようであった。【終】 トップページ
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/582.html
前へ 「みや、元気?」 めぐに梨沙子ちゃんを託し、戻ってきた舞台袖で深呼吸していた私の背中を、愛理が軽く叩いた。 「あ・・・うん」 「緊張してる?さっきまで全然だったのに、まさかのアンコールから?」 可愛らしい八重歯をのぞかせて、ケッケッケと独特の声色で笑う。 「・・・なんか、ごめんね、愛理」 「ん?」 「今日、振り回しっぱなしでさ。本番なのに」 そう口に出して、私は改めて、今日のステージのことを思った。 つい数時間前、開演ギリギリまでは、去年同様、観に来てくれた人に楽しんでもらうことだけを考えていた。 それが、思いがけもしなかった“彼女”との再会で、すべて変わってしまった。 「んー・・・別に、気にならなかったけど」 「本当?」 愛理はももと違って、気持ちを胸にしまいこんでしまうところがある。 開演時間を遅らせ、ステージ上では妙なテンションでパフォーマンスをし、あげくには愛理の親友の梨沙子ちゃんを泣かせ、こうしてアンコールの時間を大幅に遅らせる原因を作ってしまった。 桃とは違うベクトルだけど、ステージをすごく大事にしている愛理が、そのことについて、何も感じていないはずなんてないから。 せめて、アンコール前に苦情を受け止めておきたい。 相手が何も言わないからって、問題がなかったなんて簡単に考えてはいけないんだ。言いたいことは、言い合わないと。 そう考えて、話を切り出したんだけど、愛理はやっぱりあっけらかんとしていた。 「・・・ね、本当に思ってることあったら、何でも言ってくれていいんだよ、愛理。 ほら、ももだって、ガンガン私にダメ出ししてきたじゃん、今日。“ちょっとぉ~、お客さんに丁寧なキャラ取らないでよぉ~!みやはクール担当でしょ!”とかいってさ」 「あは、いいのいいの。今日みたいなことも、あっていいんじゃないかな」 愛理はそういって、私が目を向けていた方向――客席ド真ん中、8列目、に目を向けた。 「・・・みや、本当によかったね」 その声は、少し掠れているみたいに聞こえた。 「私ね、知らなかったけど、知ってたんだ」 「うん・・・」 愛理の目線が、今度は舞ちゃんと打ち合わせ中のお嬢様に切り替わる。 千聖お嬢様は、とても真剣な眼差しで、手元の資料を見ながら、なにやら指示を出しているようだった。 ずっと、ふわふわしていて臆病な印象を持っていたのに、そのイメージは、関わっていくごとに覆されていく。 まだ完全に心を開いてもらったとは思わないけれど、私にも最近やっと、お嬢様の“素”がわかってきたような気がする。 「結構前の話だけど、めぐね、お嬢様が友達と揉めちゃった時、すっごく怒って、すっごく心配してたの。 お嬢様とその人が仲直りするまで、ずーっと2人にかかりっきりだった。どんなにお嬢様が癇癪を起こしても、泣いても、絶対に折れなかった。 めぐっていつも冷静だし、ああいう姿を見たのはあれが最初で最後だった。今日、やっとその理由がわかった気がする。 まさか、こんな近くに、めぐの心を支えている人がいたなんてね」 少しいたずらっぽく微笑まれて、ほっぺたが赤くなる。 「そんなこと、あったんだ・・・」 何せ、さっきやっと仲直りをしたばかりだったから、連絡をとっていない間のめぐの様子なんて全く知らない。 もしも、愛理の言うように、めぐの中にもずっと私がいたのだとしたら、それはとても嬉しいことだ。 「きっと、めぐはお嬢様に、自分の大切な思いを預けていたんじゃないかな。 お嬢様はそれをわかっていたから、今日、こういう形で、めぐに返してあげた。 自分を助けてくれたときと、同じ方法でね」 そう言って笑う愛理は、自分なんかよりずっと大人っぽく見えた。 いつもマイペースで、独特の視点から、周りの人のことを思慮深く見つめている愛理。 今回のことも、ずっとずっと見守っていてくれたんだろう。お嬢様のことも、めぐのことも、私のことも。 「あのさ、もし、愛理が友達関係で悩むこととかあったら、ちゃんと相談してね!」 「えー、そんな縁起の悪い!みやびさんたら、もぉ~」 「いや~ん」 2人して突っつきあってふざけていると、「ほら、そこ2人、何してンの!」とうちの“自称リーダー”さんから声がかかった。 「ジャレてないで、こっち来て!」 ももに呼ばれるがまま、裏方さんたちも集まっているその場所へ慌てて移動する。 ――本当、いろいろあったけど、今年のステージも楽しめてよかった。 あとは、アンコールの“あれ”を無事終わらせる事ができれば・・・ 私は深呼吸して、一人一人の顔をジッと見た。 夜遅くまで残って、裏方の仕事を頑張ってくれた千聖お嬢様、熊井ちゃん、舞ちゃん。 2年も一緒に、Buono!として活動してきた愛理ともも。 私たちのために、無償でバックバンドを引き受けてくれた軽音部のみんな。 私は来年、もう一度ステージに立つチャンスはある。 だけど、このメンバーでやれる時間は、もうあとわずかしか残っていない。 「・・・みや、何泣きそうな顔してんの」 にやにや顔のももの指摘で、自分が感傷的になってることに気づく。 「なんでもない。さ、早く準備・・・」 その時、後ろから、ポンと肩を叩かれた。 「・・・あ、れ?」 そこでニコニコしながら立っていたのは、ちょっと意外な人だった。 うちの学校のとは違う、濃紺のセーラー服。 「お嬢様からアンコールでの趣向を伺って、ぜひ私も協力させていただきたく、お邪魔させていただきました」 「はぁ・・・それは、どうも」 私は前に、学校新聞の取材をさせてもらった程度の仲だから、なんとも距離感がつかめない。 でもお嬢様や熊井ちゃん、それからももは彼女と親しいらしく、とても嬉しそうに話しかけたりしている。 キョトンとしている私をよそに、彼女は、よく通る声で言った。 「あ、その前に、円陣、組みません?団結力を高めるには、これが1番!」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/okaishonen/pages/98.html
私のお兄ちゃんは男の子なのに、女の子に混じってハロプロでアイドルをしている。 アイドルだから日焼けには気をつけないとね、とか言いつつ、今年もちゃんとこんがりと焼けた。 お兄ちゃんはやっぱり男の子だから、いくら気を付けてもこればっかりは無理な話みたいだ。 私は元気に外でサッカーするお兄ちゃんが好きだから、美白になってしまうのはちょっぴり寂しい。 キューティーパーティーで美白に気を付けると言い出したときは、そんなのお兄ちゃんらしくないとラジオに向かって反対してしまった。 ファンの人たちもこんがり焼けたお兄ちゃんならぬお姉ちゃんが好きだと思うのだ。 美白に目覚めたお兄ちゃんもそれはそれで見てみたい気はするけれど、私は黒いお兄ちゃんが好きだ。 だから、携帯の待ち受けはお兄ちゃんにしている。 「あっ、あっすーまた携帯みてニヤけてるな。そんなに面白いメールでもきてた?」 「ううん。スケジュールみてただけ」 「そっか。携帯みてニヤけてるから何かと思っちゃった」 よかった、お兄ちゃんは待ち受けみてニヤニヤしてるとは思わなかったみたい。 待ち受けがお兄ちゃんなのは本人も知っているけど、まさか普段から眺めてはニヤニヤしてるとは思ってもいないらしい。 それもそうだよね。 お兄ちゃんは鈍感な人間だしね。 「フッ、ハッ、たぁ~」 帰ってきて早々まだ小さい弟と一緒になって遊びだすお兄ちゃん。 中学生のくせに未だにウルトラマンが大好きで、弟と夢中でテレビにみいっていた。 必殺技をウルトラマンが決めるシーンでは、ポーズを一緒に取っていたこともある。 「僕は大人になるからウルトラマンはもうみないからな」 そんな宣言をしたときも、一週間にはしっかりテレビの前に陣取っていたお兄ちゃんを知っている。 中学生といえども、まだまだ子供な岡井千聖ですが皆さんよろしくお願いします。 トップページ
https://w.atwiki.jp/okaishonen/pages/111.html
主婦の日常は思った以上に平凡で、事件も家の中でしか起こらない。 毎日がとってもバラ色にみえた結婚前のあの頃の自分が、今では何て幼稚だったのか、と馬鹿馬鹿しくて笑っちゃう。 商社マンの旦那は毎日仕事三昧で、「子供が出来たら毎週どこかに遊びに行こう」と夢を語ったくせに、毎週接待ゴルフに忙しい。 真面目さが取りえで、会社で一番誠意ある人だと思って結婚したはずだった。 付き合い始めはすごくマメで、どんなに忙しくても毎週ドライブに連れていってもくれていた。 鎌倉、湘南、伊豆、お台場、横浜、とデートスポットには欠かさず二人で出かけたものだ。 それが今では毎週車でおでかけをするのは、買い物に近場のスーパーへ行くぐらいになってしまった。 商社マンの妻って肩書きに誰よりも自分が魅せられていたのだ、と結婚してから気づいた。 近所のお母さんたちに「私は商社マンの妻です」、って自慢したかっただけの浅い結婚だったのだ、と今更になってそう気づいた。 気づいたときには、中学にあがる娘がいるいいおばさんになってしまったけれど、どこかで私は夢みていた。 退屈な日常とは違う、ドラマチックな事件が起きることを・・・ 「ママ、ただいま~」 娘の梨沙子の元気いい声が、玄関口から台所に立つ私にも聞こえてくる。 梨沙子は今年の春で中学二年に進級した、反抗期の真っ盛りのお年頃の女の子だ。 ただ学校に行くだけなのに、制服の着方一つをとってもファッション雑誌をチェックして、流行を取り入れている。 小さい頃はしょっちゅう「ママ、ママ」、と言っては泣きじゃくっていた子がもう中学生になる。 月日は早いものだ、と娘の成長とともにしっかりと刻まれていく皺をみて溜息をつく。 「おかえり。今日は早かったのね。部活はどうしたの?」 「あさってからテストをやるから、今日から部活は休みだって言われたじゃん」 私がそれを覚えていなかったのがつくづく不満だったのか、梨沙子は頬を膨らませた。 中学生にはなったものの、まだまだ子供な面が多く残る子だ。 つい最近までお風呂も自分では入れなかったくらい、親を心配させる子だったから無理はない。 それにしても、誰に似たのかわが娘ながら随分と綺麗に育ってくれた。 梨沙子はこの年の娘にしては、親馬鹿だが、アイドルになれてもおかしくないレベルの美しさと輝きがある。 「あ、そうだ。ママ、実はね、今日は友達を連れてきているの」 「え?」 意外な言葉を聞き、思わず聞き返してしまった。 この子は今何て言ったんだろう。 「だから、友達を連れてきたっていったの。あのね、その子は勉強が苦手でりぃに勉強を教わりたいんだって」 「そうなの。いいわよ。玄関で待たせているなら、家に上げてあげなさい。お茶出してあげるから」 「ふふっ、ママならそう言ってくれると思った。じゃあ、呼んでくる」 梨沙子はにっこりとほほ笑み、玄関までバタバタと走って友達を呼びに行った。 あの子があんなに嬉しそうにしていることはみかけなかったから、母親のこちらまで嬉しくなってきた。 果たしてどんな子が現れるのか、と期待と不安の入り混じる中、お辞儀をして部屋に入ってきた子が目に入った。 ショートカットの可愛らしい女の子の友達が来た。 私は勝手にそう判断してしまったが、実際はよくみていない早とちりで、よくみてみれば、制服は男のものだ。 では、この子は男なのだろうか!? 私がよほど訝しげな表情でこの子を凝視していたことに気づいたのだろう。 梨沙子が、 「ママ、ジロジロ見過ぎだよ。全く、ママまで千聖のことを女の子だと思って。この子は岡井千聖って言って、れっきとした男の子だよ」 と、呆れたような口調でそう教えてくれた。 この子が男? 本当に私の見間違いでないのか。 不安に駆られる私に、今度は千聖君が静かに話し始めた。 「えぇと、はじめまして。梨沙子ちゃんの友達の岡井千聖です。よろしくどうぞ」 「千聖はクラスの子たちにあんまり女の子っぽいから、『岡井少女』ってあだ名で呼ばれてるの。でも、ちゃんとした男なんだからね」 「や、やめてよ。りーちゃんのママでその話はやめてってば。恥ずかしいじゃん」 「ここでちゃんと言わないとママにまで間違えられるよ。千聖は男ですって言わないとさ」 声を聞いても、私にはまだこの千聖君が男の子だとは信じがたい。 しかし、梨沙子の真剣さからにじみ出る気迫に嘘はこもっていないように思う。 それに梨沙子が私をこんなことでからかったところで、何も意味はない。 やはり千聖君は本当の男の子なのだ。 それをはっきりと認識した私に、この時、千聖君に胸ときめくことがあるとは考えられなかった。 次のページ→
https://w.atwiki.jp/okaishonen/pages/46.html
栞菜との約束、それは合同コンサートでりぃちゃんをマークして愛理から遠ざけることだった。 コンサートが終了した今、その約束を守ったかは発売された写真集に載った写真を見れば、そういう事だ。 僕はほとんど守っていないのだ。 写真集にDVDも編集されたものだとはいえ、僕はなっきぃと舞ちゃんといる時間が多かった。 舞美ちゃんとも普通に一緒にいたけど、りぃちゃんとはあんまりいなかった。 栞菜は目線で訴えてきていたらしく、気づかない僕にほとほと困り果てていた、と教えてくれた。 僕がりぃちゃんと一緒にいる時間が多くても、愛理はりぃちゃんの側にきていたと思うし、効果があったかは怪しい。 栞菜は頑張って二人の間に割り込もうとしたみたいで、話をしていたようだけど、ついていけなかったみたいだ。 それも仕方ないだろうな、あの二人はグループこそ別々だけど仲の良さは皆が認めるところだもん。 「ちっさー、どうして約束したことを守ってくれなかったの?」 「ごめんよ。忘れてたみたい」 「忘れてたじゃないでしょ~私は愛理と一緒にいたかっただけなんだから」 「そう言われてもな~とにかく後で別の事するから許してよ。ね」 「ちっさー、また忘れたとかなしだよ。いい?」 「了解。栞菜の言う事忘れないようにするね」 栞菜はぶすっとした表情のままで、まだ怒りは納まらないようだった。 約束を守らなかったんだから、当然といえば当然で、栞菜には謝っても謝りきらない思いだ。 あの事件が起きなければちょっとは協力できたとは思うんだ。 それがどんな事件かは詳しくは思い出したくもないけど・・・ コンサートのレッスンスタジオの隅でつまらなそうに座る雅を発見し、えりかは隣に座った。 雅がつまらなそうな顔をする理由を知っているえりかには、今から話す内容はきっと雅には喜ぶ自信があった。 たぶん、雅は自分の話に乗ってくる、それだけは確実だった。 「みや、最近彼氏と別れたって本当?」 「よく知ってたね。って、誰かに聞いた?」 雅はぶっきらぼうにえりかに返答し、どこを見るでもなく顔を逸らした。 彼氏と別れた話をコンサート前の時期の今、ここで話したくもなかったし、思い出したくもなかった。 それをわざわざ思い出させ、話を振った本人は愉快そうに笑っているのが気に食わなかった。 そんなに私の不幸が蜜の味か、そう毒づいてやりたい気分だったが、言わずにいた。 「そんなのお見通しだよ。溜まってそうな顔してるじゃん」 「だね~やっぱずっと笑顔で仕事するのって疲れるし、息抜きにはよかったんだけどね。で、そっちは?」 雅がご機嫌斜めなのは承知で話しかけていたが、ここまでとは予想してもいなかった。 だが、えりかにはそれをひっくり返すだけのネタだという自信があるので、特別苛立つことはしない。 「いや~いい相手みつけちゃってさ」 雅にもたれかかるようにして、耳元で囁く。 自分でも今の顔はとんでもなくいやらしいだろうな、と鏡でも見て確認してみたかった。 雅は嫌味でも言われたと思ったらしく、露骨に嫌そうな顔をしているが、それでも興味だけは持ったようだ。 「いい相手? 何、どんな奴。えりかちゃんが気に入るくらいだし、すっごいイケメンなんでしょ」 「ふふっ、イケメンといえばイケメンなんだけどね。ただ、ガキんちょなんだよ」 「ガキんちょ? 面白いな、年下が趣味だなんてそれこそ知らなかった」 えりかが年下に興味がある事がそんなに面白かったのか、雅は口を吊り上げて笑いだした。 これくらいしないと、別れた事をほじくり返された恨みや怒りの感情を和らげる方法が思いつかない。 しかし、雅に嫌味を与えられたにも関わらず、えりかはにやついた笑顔が変わることはない。 「ん~彼氏には早いけど、遊び相手にはバレないし、ぴったりなんだよね」 「で、誰なの?」 「千聖。岡井千聖」 にわかには信じがたい名前を聞き、スタジオの中央で舞美にじゃれつく千聖を目で追った。 あの子がイケメン? 馬鹿な、℃-uteのメンバーであり、性別はれっきとした女性のはずだ。 そうでなければ、キッズオーディション自体受けられるはずがなく、この場にいるのも不自然なのだ。 それでは、どういう事なんだろうか。 答えはさすがに雅にも想像はできたが、言ってしまうと自分はおかしいのではないかと思えてきた。 そう思い、えりかをみると、相手はにっこりと微笑み、間違いないとこっくりと頷いた。 まさか、そんな筈はありえない・・・ 「千聖はね、実は男の子なんだってさ。驚くのも無理はないよね。当然だよ」 「マジ?」 そう返すのがやっとだった。 「マジだよ。それでね、みやも私と千聖といいことしないかい?」 雅が冷静に考えられるようになった時、千聖が目の前を通り過ぎていった。 その時、雅には思考するよりも早く本能が千聖を欲しっていた。 ←前のページ 次のページ→
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/377.html
前へ 放課後になり時間まで図書室で過ごした後、普段とは違う道を歩く。 そういえば平日に一人でこの道を歩くのって久し振りかも。寮に入ってからは皆と一緒が 当たり前だったから。 指定のコンビニでチケット代と手数料を払い外に出ると珍しい(?)人達に会った。 「あれ? なかさきちゃん?」 「えっ? あ、友理奈ちゃんと菅谷…さん?」 「へー、珍しいね。なかさきちゃんがコンビニから出てくるの」 「あ、お嬢様から昨日お願い事されてね。チケットを」 「「チケット?!」」 「あ、うん。お嬢様が好きなアイドルグループ…でいいのかな? そのグループが 公演中の劇が見たいって。C-uteっていうんだけど…」 「あーあー。うち、そのグループ知ってる! C-uteでしょ!」 「へー、なんかちょっと意外。まぁ、私はBerrys工房の方が好きだけど」 「もー。梨沙子はすぐそうやってさ、お嬢様に対してツンな態度とるんだから」 「別にとってないし。っていうかツンって何?」 マジレス得意の友理奈ちゃんと真面目そうな菅谷さん。 このままだと私そっちのけで口喧嘩が始まりそうだったので早々に帰る事にした。 「キュフフ。じゃあ、私はお嬢様の所に寄るから」 「あ、じゃあね。なかさきちゃん。だいたい梨沙子はさぁ…」 「あ、さようなら。そういう熊井ちゃんだって…」 予想通りに軽い口喧嘩になりつつある二人の会話。 あの後、話が逸れるに逸れて嗣永さんへの愚痴に発展したとかしなかったとか。 二人と別れお屋敷に着いた私はお嬢様に朝同様に袖を引っ張られて中に入ると封筒から 電話番号の書かれた紙を取り出し電話を掛けた。 若干いつもより上擦った声ながら奥様にお礼の言葉を述べる事が出来たのは私の中で 上々の出来だろう。 電話を代わったお嬢様はというと普段以上の子供らしさで学校の事、寮生である私達の事、 劇をすごく楽しみにしている事を話している。 「ではお母様、そろそろ。はい、はい。ええ、また掛けますね」 受話器を置き一息吐くお嬢様。そしてすぐに満面の笑みを私に向けてくれた。 「なっきぃ。本当にどうもありがとう!」 「いえ。お礼を言うのは私の方ですよ。ここまでして頂いて」 「そんな事ないわ。なっきぃが私のお願いを聞いてくれたから」 「最近…本当に最近なんですけどお嬢様はもっと普通と呼ばれる事をしてもいいのかなって 思うようになって」 「なっきぃ?」 「キュフフ、土曜日が楽しみですね。10時頃にお迎えに行きますから」 「え、ええ。楽しみにしてるわね」 少し強引に会話を終わらせて私はお屋敷をあとにした。 言うつもりはなかったんだけどなぁ。でも奥様と話されるお嬢様があまりにも楽しそうに 見えたから。 空を見上げると一際明るく輝いて見える星があった。その星にそっと言葉を伝える。 「ほんと楽しみだね。千聖」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/663.html
前へ 愛理ちゃんとのやりとりを黙って見ていてくれたり、更に今も一緒に座れだなんて、今日の桃子さんは妙に優しいな。 やっぱり軍団長は大人なんだ。さすがだな。 そんな桃子さんにも申し訳ないから、もう僕は帰ります。 ありがとう桃子さん、なんて思っていたら、桃子さんが愛理ちゃんに話しかけているのが聞こえてきた。 「聞いたでしょ、愛理。この少年は愛理のこと特別に想ってるんだって。人気者だねぇ、あいりん」 僕の耳がピクッと反応する。 前言ちょっと保留。 桃子さんのちょっといやらしいその言い方。しかも、何かそんなことわざわざ言わなくてもいいのにってことを言っている。 これはたぶん、わざと僕に聞こえるように言ってるんだ。 それを無視することの出来ない単純な僕は、つい話しに割り込んでしまった。 「桃子さん!」 「あれ? なーんだ、こっちのテーブルにしっかり聞き耳を立ててるんだ。もう帰ります!!とか言ってたくせにw」 僕が振り向いたとき、桃子さんはすっごく楽しそうな笑顔だった。 その表情を見て僕はようやくわかった。 桃子さんは僕と愛理ちゃんのやりとりを黙って聞いていてくれてたんじゃない。 じっとタイミングを計っていたんだ。仕掛けるタイミングを。間違いない。 「少年、愛理のこと好きなんでしょ? いま言ったのはそういうことじゃないの?」 刺激的なセリフで僕を挑発する桃子さん。 僕には分かる。桃子さんが何を言いたいのか。 というか、桃子さんが僕に何をさせたいのかということが。 これはこの前お嬢様とご一緒した時と同じことなんだ。状況も同じなら桃子さんの表情も同じなんだから。 また僕をもてあそんだ挙句に、僕の気持ちを僕自身の口から大発表させようと誘導しているのだ。 なんでそんなことをするのかって? そんなの、もちろん桃子さんが自分で面白がるため。ただそれだけのために。 そう何度も同じ手を食うものか。 だから、桃子さんの挑発的な質問にも慎重に答える。 「違いますよ」 「なに?好きじゃないの? じゃあ愛理のこと嫌いなんだ」 「まさか! そんなわけないじゃないですか」 「ほら、好きなんじゃん。意味がわからないよ、少年」 だめだ、相手が悪い。 桃子さんの攻撃がじわじわと効いてくる。 でも、僕に愛理ちゃんの前で大発表させようとしているのは、また僕の舞ちゃんへ対する想いなんでしょと早合点したが、そうではないのかな。 いまずっと桃子さんが聞いてくるのは、ひたすら僕の愛理ちゃんに対する気持ちのことだ。 そうか、そっちでイジりに来たか。 今しつこく言ってきてるのは、愛理ちゃんに対して「好き」っていう言葉を僕から引き出そうとしているんじゃないだろうか。 だから桃子さん、「好き」の意味が違うんですよ! あの時説明したことの繰り返しになるだけなんですが、それをさせようとしてますか。 また長々と言葉の使い分けの違いを説明して、そしてお嬢様への僕の気持ちにも言及せざるを得なくなりry、って。 それをさせるのが狙いなんだろうか。 そんな説明、恥ずかしくてここで出来るわけがない。目の前にいるのはあの愛理ちゃんなんですよ。 お互い振り向きながらやりとりする僕と桃子さんを、愛理ちゃんがテーブルに頬杖をつきながら微笑を浮かべつつ眺めている。 桃子さんの後ろ側に見えるその光景に、また僕は固まってしまう。 ・・・無理。 僕の気持ちなんか、愛理ちゃんに知っていただく必要はありません。 僕の彼女へのファンとしての気持ちはさっき本人に直接言った通りだから、それ以上の余計なことは言う必要なし。 愛理ちゃんのこと だ け を考えている僕に対して、桃子さんがそろそろ御立腹のようです。 「こらー!! もぉのこと素通りして、後ろの愛理に見とれるとか、どういうことだ少年!」 そうですよね、ちょっと露骨に見入っちゃいましたから。 「謝りなさい、わたしに」 なーんだ。 いろいろ言ってるけど、僕が他の子に見とれていることに嫉妬してるんだな桃子さん。 ちょっと彼女のことを、かわいいな・・なんて思ってしまった。 「ご、ごめんなさい」 もちろん僕に見て欲しいなんて、そんなこと桃子さんが思ってる訳はないわけで。 ただ単に、他の子に見とれてるのが感情的に気に入らないだけで。 そして、それと同時に自分が優位な立場に立つための言葉のトラップなんだ、これは。 やばいぞ、この展開は。 桃子さんは意識的に誘導している。この会話の展開を。 今ので完全に主導権を桃子さんに握られてしまったようだし。 僕のかなう相手じゃないのだ、桃子さんという人は。 「Buono!のファンとしてあるまじき態度だよ。リーダーに対してそんな態度、許されると思ってンの?」 「許されるも何も、・・・そりゃ自分の推してるメンバーの方に見とれちゃいますよ・・」 「なに?声が小さくて聞こえない! 少年はこれからもぉと愛理のどっちを応援するわけ?」 「Buono!のときですか? 愛理ちゃんですね(キッパリ)」 挑発的な桃子さんとやりとりするうちに、僕もつい聞かれたことにムキになって答えてしまう。 「ちょっと、もぉと愛理のどっちが好きなの。ハッキリしなさい」 その答えは質問される直前に、これ以上無いぐらいハッキリと答えたじゃないですか。しつこいな。 舞ちゃん以外の人の誰が好きかなんて、その議論は意味がない。もうこの話しは終わりにしたい。 それでも容赦の無い桃子さんは、その口調と表情と仕草で僕を徹底してイライラとさせてくれる。 そして、意外な人の名前が出てきたことで、僕のイライラはピークに達した。 「あ、分かった! やっぱり一番好きなのはくまいちょーなんだぁ!!」 頭の血管がピキッ!と音を立てるのが聞こえた。 思わず頭に血が上ってしまい、思いっきり叫んでしまう。 「熊井ちゃんのわけないでしょ! 僕が一番好きなのは舞ちゃんなんですから!!」 僕の発言を聞いた桃子さんの口角がニヤーッと歪む。 その後ろで愛理ちゃんが、その大きな目をさらに見開いていた。 ・・・・・ 僕は、馬鹿なんだろうか・・・ 分かっていたのに、結局同じ手に引っかかってしまうなんて。 いや、違うよ。 恐ろしいのは桃子さんなんだ。罠に落ちないように気をつけていたのに。 分かっていも、桃子さんにはまるで歯が立たなかった。さすが、軍団長・・・ 周りのテーブルの人からもクスクス笑われている気配がする。 顔が真っ赤になっているのを自覚する。 この場の空気にもう耐えられない。 「ぼ、僕はこれで失礼します!!」 「えー・・・もう帰っちゃうのぉ? せっかくだから、みやも呼ぼうと思ったのにぃ」 そんな桃子さんのからかいももう僕の耳には入ってこなかった。 あわててカバンを掴んで、二人に頭を下げてその場を後にする。 恥ずかしかった。愛理ちゃんの前であんなこと宣言しちゃうなんて、恥ずかしすぎる。 そして、明日もこのカフェに来て場所取りしなければならいことを考えると、さらに恥ずかしさがつのる。 気が重いなぁ。でも、席取りをさぼったりしたら熊井ちゃんから怒られるからそれは出来ない。 まぁ、明日のことは明日のことだ。 それに、僕はいま意外とそれほど気分は落ち込んでいないのだ。 そう、思いがけず会えた愛理ちゃん。そのことが僕の顔を緩ませる。まさか愛理ちゃんに会えるなんて! 間近で見る愛理ちゃん、本当にかわいかったなあ。 ひょっとしてもぉ軍団とやらに関わるってことは、それほど悪いことでは無いような気もしてきたのだ。 だって、この間はお嬢様とお会いできたし、今日はこのように愛理ちゃんに会えたのだから。 うん、それだけおいしい思いが得られるなら、軍団と関わることで生じる多少の苦労は我慢できるんじゃないだろうか。 しかし、もぉ軍団がそれほど甘い集団では無いということ、それはこれからの未来が証明してくれることになるのだが、今の僕にはそんなこと知る由もなかったのだ。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/439.html
前へ 「はあぁぁあん・・・」 「栞菜ったら、もう!情けない声出すなよっ!」 月曜日の学校のホームルーム。 お取り巻きさんたちにまで義理チョコを配っているお嬢様を見て、私は机に突っ伏した。 「お嬢様、私達なんかのために、こんな可愛らしいチョコレートを!!!!すぐに御返しを準備しますねっ!!!」 「ウフフ、お気遣いなく。美味しく召し上がっていただけたら嬉しいわ」 「ちーさとっ♪桃のチョコかわいー!ありがとねー」 「お嬢様、私もありがとうございます!クッキー焼いてきたんで、よかったら食べてくださいね」 ――そりゃあね、嗣永さんとか夏焼さんがもらってるのは、まあ仕方がないと思う。 でも、でも、でも! 「・・・ねえ、私、お嬢様に聞いてみようか?喧嘩しちゃったわけでもないのに、2人にだけ何にもあげないなんておかしいもん」 なっきぃは優しくそう問いかけてくれるけど、テンションダダ落ちの私も、目が吊り上ってる舞ちゃんも「・・・いい」と同時に首を横に振った。 「こうなったらちしゃとから直接話が来るまで、絶対にこっちからはチョコの話振らないから」 「うん・・・それに、貰ってるなっきぃから打診してもらうなんて、ライバルとして屈辱的だかんな」 「でもさ、」 「オランジェー・・・」 「オレンジピィィィール・・・」 「ひぎぃっ」 ガーッされた恐怖が蘇ったのか、なっきぃは大げさにのけぞる。 その後すぐにホームルームの先生が入ってきてしまったので、話はそこで中断された。 「ああもう、何だよ千聖のやつ!」 「本当だかんな、これはお仕置きされても文句は言えない事例だかんなっ」 舞ちゃんとともに口を尖らせて、前の席でイチャイチャしてる嗣永さんとお嬢様を見てるうちに、すぐに終了時間が来てしまった。 「じゃ、また後でね」 「うん、それじゃ。・・・行くよっちしゃと!」 「きゃんっ!もう、舞、そんなに引っ張ったら痛いわ!」 ちょっと、いやかなり乱暴にお嬢様の手を引く舞ちゃん。 憤っているとはいえ、完無視とかはしないのが舞ちゃんらしいこと。 2人の姿を見送ってから、高等部の教室へ向かう。 「・・・ん?」 机に教科書を入れようとしたら、引き出しの奥でコツンと違和感がした。 「ん?」 覗いてみると、なにやら四角いタータンチェックの箱。 これは、もしや・・・ 「あれー?どうしたの、それ」 「うわっ」 視界が翳ったと思ったら、後ろから大きな熊・・・もとい、熊井ちゃんが、私の手からそれをひょいっと掴み取った。 「何か、机の中に入ってた」 「ふーん」 上下左右、じっくりくまなく観察すると、熊井ちゃんはニヤニヤしながら私に箱を返してくれた。 「これは本命チョコだねー」 「えっ」 「お尻にカード挟まってるよ」 見れば、レースのリボンに絡まるように、ちょこんと挟まっている小さなハートのカード。 ホームルームの前に、クラスの友だちや寮のみんなとのチョコ交換は大方済んでいるから、本命かどうかはおいといて、多分私の知らない人からの贈り物なんだろう。 「開けないの?」 「ちょっと、友理奈ちゃん!こーゆーの覗き込んだら失礼でしょ!」 とか言いつつ、なっきぃも鼻の下伸ばして私の手元を気にしている。 ――どうしよう、これで開けたら「期待したかバーカwwwww」なんて書かれてて、中身もうんこチョコ(リアルver.)とかだったりしたら・・・。 「ちょっと、一人で見てくる」 お嬢様の件もあって、チョコにはかなりナーバスになっている私、ネガ栞菜。 小走りで廊下の隅っこまで移動すると、おそるおそるカードを開く。 「あ・・・」 “有原先輩に憧れてます。もしよかったら・・・”というメッセージの下に書かれていた名前を目にした途端、私の頭の中の原色美少女大図鑑が自動的にペラペラとページをめくり始めた。 ――知ってる、この名前。 大変申し上げにくいことなのでございますが、それは初等部の生徒さんだった。 幼等部から大学部まで揃った懇親会の時、目にした美少女。芸能界のお仕事をしているらしく、華やかで目立っていた。 即座に原色(以下略)に登録されたから、よく覚えている。 「いやいや・・・だからって、ロリはあかんやろ」 「ハァッ!?なに言ってんの栞ちゃん!!!」 「うおっいたのか!」 忍者のごとく忍び寄ってきたなっきぃが、私の取り落としたチョコを拾う。 私のリアクション&発言(ロリ)で何となく事態を把握してくれたみたいで、つめたーい視線を向けてくる。 「いや、大丈夫でげすよなかさきの助。わてはお嬢様一筋でがんす。フヒヒwww」 「・・・私、栞ちゃんが逮捕されたらテレビのインタビューでありのままを話すからね」 「ちょっとぉ~」 何の犯罪だか言わなくても通じてるところが哀しいかんな・・・。って、そんなことよりも 「どうするの?」 「どうするって、一応ホワイトデーに何かお返しするけど。・・・何、その顔!私がしょしょ小学生に手を出すとでも!?見くびってもらっちゃ困るかんな!まあ興味はあるけどな!私は℃変態は℃変態でも、健全な℃変態なんだよっ」 「あーもーわかったって!そんなこと大声で言わなくていいから」 私の主張に苦笑(というか冷笑)したなっきぃは、後ろに回していた手をスッと差し出した。 「ん?」 赤×ピンクの不織布のギフトバッグ。中をのぞくと、オレンジゼリーがコロコロと3つ。 「・・・キュフフ、私ももらっちゃった」 名前を聞くと、それは中等部1年生のこれまた原色(ryな大人びた美少女だった。 何度か明日菜お嬢様と行動をともにしているのを見たことがある。 「体育祭のチームが一緒で、仲良くなったんだ」 「覚えてるよ。応援演目で、なっきぃと妖精みたいなキャラになりきってペアでダンスしてた子でしょ。・・・ちょっとぉ~なにデレデレしてんだよぉ。私のこと℃変態とか言えないじゃんかよぉ」 「キュフ、痛いよ叩かないでよ、もう。だって嬉しいじゃん。風紀委員の時とかみんなにガミガミ言ってばっかなのに、慕ってもらえるなんて」 「またまたご謙遜を。なっきぃに人気あるのはさぁ、わかりきってることじゃん。こないだの1人ギャル騒動の時にだって」 「そりは言わないでケロー!」 キャアキャアと騒いでいたら、ちょっと人だかりができてしまったから「すいませーん」と抜け出して、またなっきぃと並んで歩く。 「でもさ、栞ちゃん。お嬢様にチョコ貰えなくたって、こういう嬉しいこともあるんだから落ち込まないでよ」 「・・・そりゃ、なっきぃはもらったからそんなこと言えるんだよぅ」 とは言いつつ、確かにさっきより心は晴々している。 ずっと追う恋(?)だったから、こんな風に慕われて、嬉しくないはずがない。 「ふう・・・めぐる恋の季節だかんな・・・」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/okaishonen/pages/58.html
「愛理~何を書いてるの? 何だか、日記みたいだけどさ」 何も知らず、私が日記を書いていると思って覗き込むちっさー。 彼はついこの間、私がいる前で二人との恋に一応は決着をつけたばかりだ。 まさか、そのお話がここに記されているとは思いもしないだろうから、見たら仰天して腰を抜かすかもしれない。 ちっさーにしては、やけに饒舌に語りすぎたかな、出来事を並べていくだけになってはいまいか、と悩んだりもした。 悩んだ結果、こういう形になっているので、ほぼ完成形といえる。 ちっさーだけでなく、舞美ちゃん、えりかちゃん、舞ちゃんの心情を綴ったこともあった。 キッズに入ってからの歴史から語られていることを思えば、本当に長い物語になったなと感慨に耽ったりもする。 知ったかぶりして、少し難しい言葉を使ってしまったかもしれない。 感慨に耽る、後で辞書で調べておこう。 「Buono!!のブログのネタだよ。どこにお食事にでかけたのかなとか思い出すのに利用するから」 「へぇ~面倒だね。僕にはとても出来そうにないよ。三日坊主になりそうだ」 快活に笑うちっさーの笑顔には無邪気さしか感じられない。 この少年はいつだって、純粋に自分の気持ちに素直に何事も選択してきた。 それでいて、優しさ故に誰も傷つけまいと最低限の配慮は忘れない。 ちっさーがこれで、二人に興味がなかったなら、私も少しは彼氏の候補にしてあげただろう。 結末を知った今は、ちっさーより相応しい人を待つつもりだけれど。 「愛理はさ、僕なんかより頭いいし、難しそうなの書いてるね。こんなに文字がいっぱいだよ」 「だぁめ、ちっさーはブログで確認しなさい。これはまだ書いてる途中なの」 「はいはい、わかったわかった。ブログで確認しておくね」 この岡井千聖がハロプロキッズに参加し、℃-uteの活動を続ける中で、芽生えた恋の物語。 これには終わりがありません。 でも、皆さんにお聞かせできるお話は一旦ここで終わりとなります。 とはいえ、慌てないでほしいんです。 何故なら、この物語は再びお聞かせできるときがくれば、いずれ皆さんにお聞かせできるでしょうから。 さて、締め括るに当たり、今まで語り部であった千聖から真の語り部にバトンタッチすることにしましょう。 私は誰か、それは皆さんもよくご存知であるはずです。 岡井千聖を名乗り、これまでの全てを語ってきた私の名は、鈴木愛理。 この物語の全てを傍観し、時にかき回し、蒐集してきた者です。 皆さんの心の準備はいかがでしょう、よろしいですか? では、物語の最後の扉を開いてみましょう。 その先にある結末は単なる通過点に過ぎないことも付け加えた上で、進めてみましょう。 もちろん、語り部も本来の千聖君に戻してです。 ←前のページ 次のページ→
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/915.html
前へ 部室のあるサークル棟までは結構距離がある。 そんな学内を桃子さんを隣りにして歩いていく。 一緒に歩いているとは言っても、この人は決して歩調を合わせたりはせず、気ままに立ち止まって周りを見回したり、そうかと思ったらおもむろにスキップし始めたり。 「あれが僕らの学部棟です。サークル棟はここから反対に図書館の前を通って真っ直ぐ行ったところです」 桃子さんの、そのぷりぷりとした歩き方。 エキセントリックな人だよ、本当に。 でも、そんな桃子さんと一緒に学内を歩くこのとき、僕は正直かなりウキウキとした気分になっていた。 だって、何だかんだ言って、桃子さんってその、やっぱりかわいいから。 そんな人を横にキャンパスを歩くのってさ・・・・ 高まるんだよね。 だから今僕はけっこう嬉しかったりして。 「ふーん、ここがくまいちょーの舞台となるキャンパスかぁ」 恐ろしいことを言わないでください。 「くまいちょーのryって・・・ でも確かにそうなのかもしれないです。早くもその名を学内に轟かせてるし」 「もうそんなに有名なんだw さすがだねーw」 「今も学食にも顔を出さないで、どこで何をしてるんだか。また何か問題を起こしてなければいいけど」 「くまいちょー、忙しいんだね」 「えぇ、なんか毎日飛び回ってますよ。何をしているのかよく分からないことが多いですけどね」 「張り切ってるねー。まぁ、毎年恒例のアレだね。くまいちょー、毎年この季節になると張り切っちゃうからw」 「えぇ、そうですね。もうちょっとして春が終われば落ち着いてくれることでしょう」 だといいんですけどね・・・ 「ここがサークル棟です。軍団の部室は、この5階になります」 「へー、いかにもって感じだね。見て見て。中庭に七輪でサンマを焼いてる人がいるよw」 「昼食を自炊してるんでしょう。この建物には色々な人がいますから」 「学園の大学とはだいぶ雰囲気が違うなあw」 「そうなんですか? まぁここには変わってる人が多いとはいっても、ダントツなのは熊井ちゃんry 雑然としているこのサークル棟に全く似合わないそのピンク色の人がブリブリと階段を上っていく。 なかなかシュールな光景だ。 しかし桃子さん、そのミニスカート姿で前を歩かれると・・・ み、見えそう・・・ 非常に高度な葛藤と戦いつつ階段を上りきり、そこから暗い廊下をすすんでその真ん中あたり右側にあるドアを開ける。 昨日からもぉ軍団の部室となったこの部屋。 そこにあった、いかにも座り心地のよさそうな長いソファーに身を投げ出したかと思うと、そこにちょこんと座る桃子さん。 その(コンパクトな)脚を投げ出すように伸ばし、その膝にこれまた伸ばした手を置いて周りを見回している姿がとても可愛らしく・・・ ・・・って、あれ? なんだこのソファーは? 昨日は無かったぞ、こんな立派な備品。どうしたんだろう、これ。 頭の中に疑問が浮かんでいる僕の耳に、桃子さんの声が入ってくる。 「ふーん、ここがもぉ軍団の部室ね。なかなか立派なものじゃない」 「熊井ちゃんが不法占拠しちゃったんですけどね」 「もともとはどこのサークルの部屋だったの」 「この間仕切りで仕切ってある向こう側は、今でもそのサークルの部屋ですよ。アイドル研究会です」 「アイドル研究会?」 ソファーを立った桃子さん、今度は座椅子の上に立ち上がり、間仕切りに手を掛けて上から覗き込もうとした。 目の前の光景。そう、いま桃子さんはミニスカート姿なのだ。 その彼女が椅子の上で背伸びをして、つま先立ちで向こう側を覗き込んでいる。 今度こそ、その光景に思わず見入ってしまいそうに・・・ 「誰もいないや。つまんないの」 どんな人たちなのか見てみたかったのに、なんて言って笑う桃子さん。 でも、このサークルの部長さんは、そうあの桃ヲタさんだ。 うーむ。会ったりしたらどうなるのか見てみたい気もするが、非常に危険だ。このピンクの人達は僕にとって警戒対象・・・ 「なるほど、いかにもアイドル研究会!って感じの部屋だねー。こういうのは梨沙子の得意分野じゃない?」 普段の物静かで理性的な梨沙子ちゃんしか知らなければ、彼女がこんなヲタ部屋を見たりしたら「あばば、ギャフン」と逃げ出すに違いないと思うだろう。 ところが、もぉ軍団でこの部屋に一番ハマりそうなのが、実はその梨沙子ちゃんなんだから、世の中わからないものだ。 彼女のあの雅さんへの熱狂度合いを見る限り、梨沙子ちゃんならこの部屋の雰囲気にも十分に馴染めると思われる。 いや、それどころか、あっという間にこの部屋のヌシ的ポジションになってしまうんじゃないか? ヲタモードの時のりーちゃんって、とにかくすごいから。 「見て見て。色々なポスターが貼ってあるよ」 そう言って桃子さんが急に振り向いてきた。 おっと、、、僕は慌てて居住まいを正す。 危ない、危ない、、、 ←(何が?)。 僕を見下ろしている桃子さんの、無邪気で楽しそうなその表情。 この人、(見た目は)本当にカワイイな。 ・・・ゴホン。 でも、貼ってあるよって言われても、僕の位置からはもちろん衝立の向こう側のポスターなんか見えないですよ、桃子さん。 部屋の半分を占拠されたアイドル研究会。 備品の整理ももうついたみたいで。 もぉ軍団のムチャ振りを受け入れて落ち着いてくれたことにホッと安心を覚え、どのような感じになったのかな?と、僕もちょっと覗き込んでみた。 おー、大量のグッズ類や本・DVDも壁面一杯に使ってしっかりと収納し直されている。 うまいもんだw ヲタという人種は結構マメな性格の人が多いのかな。 そこに貼ってある一枚のポスターが、僕の目に入ってきた。 あ、僕が好きな5人組アイドルグループのポスター。 その端っこに立っているメンバー。似てるよなぁ。 舞ちゃん・・・・・ 今朝から僕の心を重くしていた苦悩をまた思い出してしまい、思わず顔を伏せてしまう。 だから、そのとき桃子さんがとっても楽しそうな表情を浮かべたのには気付かなかったのだ。 心が沈んでいきそうになった僕の耳に、桃子さんの声が入ってくる。 不意に語りかけられた軍団長の言葉。それは予想外の言葉で、そして、その声はとても柔らかいものだった。 「何か悩みがあるならもぉに話してごらん?」 俯いていた顔をあげると、小首を傾げて覗き込むように僕を見ている桃子さんと目が合った。 その黒く円らな瞳に、意識が吸い込まれそうに・・・ 「舞ちゃんのこと、何かあったの?」 「な、な、な、なんでそれを・・・・ 何で舞ちゃんのことを考えてたって分かったんですか!?」 僕の叫ぶような声を聞いた桃子さんが苦笑する。 「だって、いま呟いてたじゃない。『所詮は男と女・・・ そうか、舞ちゃん!!』って」 また無意識に口に出していたのか僕は。 そんな核心的なことをハッキリと。よりによってこの桃子さんの前で。 「何が“そうか、舞ちゃん!”なの? 何を思いついたのか、その言葉の続きを教えて?」 次へ TOP